課題
個人開発している数字合成パズル、Number Mergeで、新しい収集要素として小さな精霊のキャラクターイラストを画像生成AIで作ることにした。ところが、狙った変化を出そうとするたびに、想定とは違う形で裏切られる場面が続いた。
解決できるようにすること
AI画像生成で「狙った変化」を実現する方法には、生成前のPrompt(指示文)で表現する方法と、完成した画像を後から画像処理で加工する方法の2通りがある。今回、両方でつまずいた実例から、どちらを選ぶべきかの判断材料を持って帰れるようにする。
先に結論
頭身を10段階で進化させたかったのに、可愛さを保ちたいだけのつもりで足した一文が、頭身の指示そのものを上書きしてしまっていた。
もう一つ、完成画像からキャラクターと背面の装飾を機械的に切り分けようとしたところ、境界を「意味」で理解できない処理では、きれいに分けられなかった。最終的には、同じAIへ自然な文章で「キャラだけ抜き出して」「今度は残りを抜き出して」と順番に頼み直したことで解決した。
どちらも、AIの生成物に対して「狙いをどこで実現するか」を見誤っていたという共通点がある。
この記事でわかること
- 補足のつもりの一文が、Promptの主要な指示を無効化してしまう典型パターン
- 完成画像の機械的な画像処理(マスク分割)が苦手なこと、得意なこと
- 同じ狙いを、生成前の自然文指示に置き換えて解決した実例
頭身が、10段階全部同じになっていた
Number Mergeの新しい収集要素は、同じキャラクターの系統を10段階の見た目の進化で表現する計画だった。低い段階では人型ではなく丸みを帯びたゆるキャラのような姿、最終段階では人型に近い完成された姿、というイメージ。
Promptには、段階が上がるごとにゆるキャラのような姿から人型へ近づき、頭身(頭の大きさに対する体全体の比率)が上がっていくよう、各段階ごとに細かく指示を書いた。
ところが、10枚を実際に生成してみると、「あれ、全部同じ頭身じゃないか」となった。大きさや装飾は段階ごとに変わっているのに、頭の大きさに対する体の比率だけが全ての段階で同じままだった。
原因は、可愛さを守るための一文だった
見直してみると、頭身とは別に、「見た目が変わっても可愛さは保ってほしい」という補足の一文を、共通のPromptへ足していたことに気づいた。
こう思う人もいるかもしれない。
「可愛さの指定と頭身の指定は、別の話のはずでは?」
実は、この一文の書き方に問題があった。「頭身がいくつになっても」という言い回しが、頭身そのものを固定する指示として読み取られてしまっていた。可愛さを守ってほしいだけのつもりが、頭身進化の指示を上書きする形になっていた。
可愛さの担当を「表情」に絞ったら直った
修正では2つのことをした。
- 各段階の頭身指示を、手足の有無や形までさらに具体的に書き直した
- 可愛さを保つ一文を、「表情や色合いで可愛さを出す」という指示に書き換え、頭身を固定するような言い回しを削除した
可愛さの担当を表情・色合いだけに絞り、頭身の担当はそれぞれの段階の指示にすべて任せる形にした。この2点を直してから作り直すと、10段階それぞれで頭身がちゃんと変わるようになった。1つの指示が「保ってほしいのは表情だけ」なのか「体全体」なのかを曖昧にしたまま書くと、後から追加した一文が主役の指示を乗っ取ってしまう、という教訓になる。
完成画像から、キャラと羽を分けようとした話
頭身の件が片付いた後、別の課題にぶつかった。高い段階のキャラクターには、背中に羽のような装飾が付く予定だった。小さい表示サイズでは羽まで含めると潰れて見えづらいため、「キャラクター本体だけの画像」と「羽など背面の装飾だけの画像」を別々に用意し、大きい表示のときだけ重ねて使いたいと考えた。
まず、本体用と装飾用をそれぞれ独立して生成してみた。結果、本体用の画像には装飾の光がうっすら残ってしまい、装飾用の画像は本体と無関係などこかの完成した羽として生成されてしまった。同じ絵を2つに分けたことにはならなかった。
マスクでの機械的な分割は、境界を「理解」できなかった
次に試したのが、すでに承認済みの完成画像を、画像処理でキャラクター部分とそれ以外に機械的に切り分ける方法。人物の領域を切り抜くマスクと、その反転マスクを使って2枚に分け、再び重ねてみると、色の情報は完成画像とピクセル単位で完全に一致した。
「これは完璧では」と思ったのもつかの間、実際の見た目を確認すると、キャラクターと羽が重なる境目がガタガタしていて、衣装の外側に羽の切れ端が残ってしまっていた。
マスクによる切り抜きは、色や位置の情報だけで機械的に領域を分けている。キャラクターと羽が「意味的にどこで重なっているか」までは理解していないので、重なり合う部分の境界だけは人の目で描き直すのと同じくらい精密な判断が必要になる、ということが分かった。この結果を受けて、この方式は不採用にした。
自然な文章で頼み直したら、意味で分けてくれた
最後に試したのが、同じ完成画像を、同じAIへ自然な日本語の文章で順番に指示する方法だった。
1回目は「元の画像からキャラクターだけを抜き出してください。羽の部分を消してください。それ以外は変えないでください」という指示。2回目は「キャラクターだけを抜き出したので、次は残りの羽などを画像にしてください。キャラクターだけを消した状態にしてください」という指示を続けて出した。
すると、1回目の指示では顔・衣装・ポーズを保ったまま羽がほぼ消えた画像が、2回目の指示では人物を含まない羽・装飾だけの画像ができあがった。2枚を重ねてみると、羽の付け根と衣装のつながりが自然に見え、キャラクター単体の画像も小さい表示サイズで顔や衣装がちゃんと読み取れることを確認できた。
ただし、元の完成画像とピクセル単位で完全に一致するわけではなく、外側の光や粒子の表現には多少の過不足が残った。それでも、マスクでは越えられなかった「意味的な境界の理解」を、AIへの自然文指示でクリアできたことになる。
こんな人に向いている
画像生成AIでキャラクターや素材を作っていて、「狙った変化が思ったとおりに出ない」「完成画像を後から加工したい」と悩んでいる人に向いている。
特に、Promptに足した一文が別の指示を打ち消していないか疑ったことがない人や、画像処理での機械的な加工とAIへの指示による加工の向き不向きを整理したい人には、判断材料になるはず。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 結論 | 補足のつもりの一文が主要な指示を上書きすることがあり、境界の「意味」を伴う加工はマスクより自然文の指示の方が向いていた |
| 教訓 | 狙いを実現する担当を、頭身なら頭身・可愛さなら可愛さと明確に分けて書く。完成後の機械的な加工は意味理解を必要とする境界には向かない |
| 対象読者 | 画像生成AIでキャラクター素材を作っている人、Prompt設計や画像処理の切り分けに悩んでいる人 |
同じ状況に陥ったときの回避策
- 頭身や色など複数の要素を1つのPromptで指示するときは、それぞれの担当範囲を曖昧にせず書く。「保ってほしいのは表情だけ」であれば、頭身に及ぶ言い回しを削る
- 狙った変化が出ないときは、後から足した補足の一文が主要な指示を上書きしていないか、まず疑う
- 完成画像を機械的に加工したい場合、マスクなどの処理は色・位置の情報しか扱えず、意味的に重なる境界の分離は苦手だと知っておく
- 意味的な境界の分離が必要な加工は、画像処理ではなくAIへの自然な文章指示で頼み直す方法も検討する
この記事は、筆者が実際に個人開発しているモバイルゲームアプリの開発記録(2026年9月19日〜21日)を基に、独自調整したAIが下書きを作成し、筆者が事実確認・編集を行った上で公開しています。

